研究テーマ

N2Oの循環

土壌や水環境中の微生物によって作られる一酸化二窒素(亜酸化窒素ともいう。化学式N2O)という物質の循環を調べる研究を行っています。 N2Oは二酸化炭素(CO2)やメタン(CH4)と同様に地球温暖化をもたらすと同時に、成層圏(高度約10-50㎞に存在する大気層) では紫外線で分解されて、オゾン層を破壊する作用をもつ気体です。さまざまな環境で試料を採取してN2Oの濃度や安定同位体の存在度を調べたり、 実験室で模擬実験を行ったりすることにより、さまざまな発生源でN2Oがどのように生成しているのか、どのように分解されているのか、どんな発生源 からの放出が多いのか、などについて明らかにしようとしています。

観測・模擬実験の例

  • 陸域観測
    FACE

    農業環境技術研究所、野菜茶業研究所などと協力して農業土壌中で発生するN2Oとその起源物質(アンモニア、硝酸などの窒素化合物)の濃度・同位体 観測を行っています。

    右の写真は、つくばみらい市のFACE実験圃場(指定区域内の大気中CO2濃度を周囲よりも高く保って植物や土壌生態系の応答を調べる施設)において 土壌や土壌ガスのサンプリングを行っているところです。

  • 大気観測
    balloon /

    国立環境研、国立極地研、東北大学、宇宙航空研究開発機構(JAXA)などとと協力して沖縄・波照間島、ロシア・シベリア上空、カナダでの対流圏(地上)大気中 のN2Oアイソトポマー比のモニタリングを行っています。また、宇宙航空研究開発機構(JAXA)、東北大などと協力して、大気球を利用して日本上空の 成層圏(高度10~35㎞)大気中のN2Oアイソトポマー比の観測を行っています。

    右の写真はJAXAの大樹航空宇宙実験場(北海道)において放球(打ち上げ)する直前の科学観測用大気球とゴンドラ(成層圏大気試料採取装置)の様子です。

  • 海洋観測
    ocean /

    海洋研究開発機構(JAMSTEC)と協力して、さまざまな海域で表面から海底までの海水中に含まれるN2Oや起源物質の濃度・同位体比観測を行って います。

    右の写真はJAMSTECの観測船「みらい」の船上にてさまざまな深度の海水試料を集める採取装置の様子です。

  • 各種発生源観測
    wwtp /

    N2Oの発生源には、農業土壌ほど大きくはないものの、人間活動に伴う発生源がいくつか知られています。自動車排ガス、バイオマス燃焼、下水・家畜排泄物処理などの過程で生成するN2Oや起源物質の濃度・同位体比観測を行っています。

    右の写真は下水処理場の処理工程ごとに、水試料を採取しているところです。

  • 微生物培養実験
    denitrifier /

    静岡大学、東京大学と協力して、硝化菌、脱窒菌、糸状菌の培養実験を行い、N2Oの生成・消滅過程におけるアイソトポマーのふるまいを調べています。

NOの生成機構解明

燃焼過程や微生物による窒素代謝過程で発生しN2Oの生成にも関わっている、一酸化窒素(NO)の同位体比を微量で迅速に測定する方法の開発に 取り組んでいます。

COSの循環

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硫化カルボニル(COS)は清浄な大気中では最も濃度の高い硫黄化合物であり、成層圏に入ると分解されて太陽光を散乱する硫酸エアロゾルになり、間接的に 温暖化に寄与していると考えられています。しかしN2Oの場合と同様にさまざまな発生源や消滅過程があり、地球化学的な循環はよくわかっていません。 そこで、特に硫黄の同位体比に注目して、環境試料中の微量COSの硫黄同位体比の測定法の開発に取り組んでいます。

右の写真は、真空装置を用いてCOSの標準試料を作成しているところです。

エアロゾル

大気中の粒子状物質(エアロゾル)に含まれる硝酸塩などの成分の起源などを明らかにするため、安定同位体比の計測法開発や観測を行っています。

水素(H2)の循環

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水素は大気中に約500ppb(1ppbは体積比で10億分の1)の濃度で存在していますが、 今後化石燃料や原子力に依存しないエネルギー源として水素の利用が増加すると、 濃度が増加する可能性があります。しかし現在の地球上の水素収支は十分にはわかっておらず、 人間活動に伴う水素の付加が将来の大気環境に与える影響の予測は困難です。 そこで、私たちは物質循環解析の有効な指標である安定同位体比を利用して、 人間も含む生物圏のさまざまな発生源から放出されたり吸収されたりする水素の同位体的特徴 および局地的な発生・消滅過程の影響を受けていないバックグラウンドレベルでの大気中水素同位体比の 長期の変動を明らかにすることを目的とした研究を行っています。

右の写真は、茨城県つくば市の畜産草地研究所の、牛の飼育試験設備です。牛から放出される水素の濃度や同位体比を調べるための 試料採取をしました。

*本研究は科学研究費 基盤研究Bの助成を受けて行っています。